Château Cos d'Estournel(シャトー・コス・デストゥルネル)の創設者、ルイ・ガスパール・デストゥルネル。1811年、彼はこの丘に畑を拓きました。その革新性は当時のボルドーでは異端とも言えるもので、ネゴシアンを介さず自らのシャトーで瓶詰めし、顧客へ直接届けるという先進的な手法を採ったのです。彼のワインはやがてインドやアラビアの王侯貴族の食卓を魅了し、その大部分が東方へと船で運ばれてゆきました。東洋への深い憧れを抱いた彼は、遠い異国の意匠をこの地に持ち込み、パゴダと彫刻を配した唯一無二のシャトーを築き上げます。「サンテステフのマハラジャ」——人々は敬意を込めて彼をそう呼びました。今も門前に佇む象の像が、その物語を静かに語り続けています。