Collection: Château de la Dauphine
シャトー・ド・ラ・ドーフィーヌ
かつてボルドーで最も名高い産地のひとつだったフロンサック。カロリング朝の時代、シャルルマーニュがこの地に要塞を築き、17世紀にはリシュリュー枢機卿が一族のために土地を求めた由緒ある土壌です。18世紀を通じて、その赤ワインは隣接するサンテミリオンやポムロールをも上回る高値で取引されていました。時代の流れの中で表舞台から遠ざかったフロンサックですが、いま再びその真価が見直されつつあります。その筆頭が、シャトー・ド・ラ・ドーフィヌです。
「ドーフィヌ(王太子妃)」の名を戴く歴史
シャトーの館は1744年から1750年にかけて建てられました。ほどなくして、ポーランド王女にしてルイ15世の義娘であるマリー・ジョゼフ・ド・サクスがこの地に滞在します。彼女はフランス王太子妃(ラ・ドーフィヌ)であり、後にルイ16世、ルイ18世、シャルル10世という3人のフランス国王を産んだ女性でした。この気高い滞在を記念して、シャトーは今日の名を得たのです。2015年からはCEGEDIM創業者ラブリュヌ家が所有し、畑ではビオディナミへの転換をはじめ、たゆまぬ投資が続けられています。
南向きの円形劇場と、53ヘクタールのテロワール
畑は日当たりに恵まれた南向きの半円形斜面に広がり、フロンサック屈指の規模を誇ります。星形石灰岩の上に粘土石灰質が重なる台地、フロンサック・モラス、斜面下部の砂質シルト粘土まで、14もの土壌タイプがモザイクのように分布。栽培は2012年より有機農法を実践し(3年後にAB認証取得)、その後は畑全体をビオディナミへと導いています。魚の養殖と植物栽培を循環させる「アクアポニクス」への挑戦も、この造り手の先進性を物語ります。
重力と時間が磨き上げる、凝縮した一杯
収穫されたブドウは光学選果機を用いず二度の手選別を経て、円形設計のセラーへ。シュヴァル・ブランと同じチューリップ型のコンクリートタンクへ重力で優しく移され、約30日間の醸し発酵。その後フランス産オーク樽で約12ヶ月熟成されます。醸造にはミシェル・ローランのチームが助言者として関与しています。
グラスに注げば、控えめとは無縁の、堂々たる黒系果実の香り。時にリコリスやダークチョコレートのニュアンスが重なります。フロンサックらしく力強く構築的で、4〜5年の熟成でタンニンの角がしなやかに解け、15〜20年、あるいはそれ以上の長期熟成にも耐える底力を備えています。ラベルの産地に惑わされず、ワインそのものと向き合いたい一本です。